背景 

ユーモアや笑いのある組織文化が自立した研修医(医学生)の学びをはぐくむ

ユーモア心理学の背景

ユーモアは体液を語源とし、人間の営みになくてはならないものと考えられ、辞書的な意味は、「社会生活(人間生活)における不要な緊迫を和らげるのに役立つ」とある。ドイツでの定義では、「にもかかわらず笑うこと」ともう一つは「愛と思いやりの現実的な表現」と2つの意味を持つ。ユーモアとは、古くから、多くの学者の興味を引き、哲学、心理学、脳神経科学、人文学と多くの研究がなされてきた。

職場でのユーモアの組織文化とその影響

WestwoodとJohnstonは、「ほとんどすべての組織や職場に入ると、ほぼ必然的にユーモアとの出会いがあり、ほとんどの場合、ある程度の頻度で遭遇する」と述べており、Blanchardはユーモア風土を「職場集団の従業員がどのようにユーモアを使い、表現しているかについての共通の認識」と定義している。医療現場におけるユーモアを始めて論じた一人であるCoserは「ユーモアは参加者の集合的な経験の表現であり、共通の関心を持つ人たちからのみ反応が得られる。時間的な性質もあり、特定の瞬間の産物となる」と述べている。数々の研究をまとめたメタ分析では、ポジティブなユーモア組織文化は、従業員のポジティブなユーモア風土はパフォーマンス、満足度、結束力、心理的ウェルビーイング、コーピングスキルを向上させ、燃え尽き症候群、引きこもりを減弱させたとある。一方ネガティブなユーモア風土では、社会規範の強制、個人の排除、集団間の分裂の強調、既存の力関係の弱体化などを目的として、誹謗や嘲笑などの攻撃的なユーモアが使われる。向こう見ずなポジティブなユーモア文化の受け売りではなく、現在あるユーモアを見つめなおし、それを生産的な方向へ導く試みが待たれる。

リーダーシップスタイルとユーモア

部署の組織文化形成の上で、リーダーシップのスタイルは大きな影響がある。社会的交換理論では、リーダーとフォロワーは社会的交流に基づいて独自の関係を築き、組織内の交流の質が従業員の成果に影響を与えることが示唆されている。McFaddenらは、ポジティブで安全な風土を促進するにはリーダーシップスタイルが不可欠であることを明らかにし、Islamらは利他主義が従業員間の相互作用を向上させることを示している。利他的リーダーシップは、RomeroとCruthirdsの5つのユーモアのタイプ(親和的、自己強化型(ストレスから身を守る)、攻撃型、温厚型(からかい)、自虐的)のうち親和的なユーモアとの関連を示唆していた。リーダーのユーモアの伝え方がフォロワーのポジティブな感情(喜び、満足、興味など)や創造的なパフォーマンスに影響を与えることを提唱している(本)。

感情と学び(行動)

人間は感情の動物と言われ、感情が人の行動に大きく影響している。教育(研修)現場では、学生は、自分の知識を計画、監視、評価し、学修計画を要求や目標に適応させる必要がある。感情の状態が自己調整プロセスに影響を与える可能性がある。学習を楽しむといったポジティブで喚起的な感情は自己調整を促進し、不安や恥といったネガティブな感情は学習の必要性を認識するために外部指導への依存を促進させる。RichardとDiefendorffはポジティブな気分の参加者はより高い学業目標を報告する傾向があり、ネガティブな気分の参加者はより低い目標を持つ傾向があることを発見している。

研究目的

医療の現場でのユーモア風土、リーダーシップとユーモアのスタイル、これらとフォロワーの感情が学び(SRL)や行動にどのように影響を及ぼしているのかを明らかにする。

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