今回は、医学書のおすすめを聞いてみたのだけれど、金城先生の外来本はとてもPracticalでいいよね。一人で外来するときの強い味方だよね。同感です!Atlas of emergency medicineのカードが出ているなんて知らなかったよ!!安いし、英語も短いし、教育的だし、早速ぽちったぞ。
チーフレジが勧めてくれたメディカルオンラインは大学だと無料だよ(施設ログインできるよ)。こういう風にこまめに知識をupdateするのはいいよね。毎日、ご飯食べるみたいに、ちょっと見てみるのなんかはおすすめです。
もちろんマイナーエマージェンシーは一家に一冊だ(大げさだったね。1ERに1冊だね)!
私はSNSは3日で炎上しそうなので、やっていません。メールアラートの形でNEJM、JAMA、BMJ、Lancetと救急雑誌系(AnEM、Resuscitation、AmJEM、EMJだったかな?)がタイトルだけ飛んできます。ちょっと小児科とかが弱くなるのでほかには、
Evidence alert (Gordon Gyattで有名なMcMaster大学監修。救急や総合診療や他の科も選択可)
Journal feed(県立の先生に教えてもらいました)
では早速みていこう!
109 A せん妄
hyperactiveタイプのせん妄の症例だね。Psychosisとの鑑別が難しいけれど、高齢者で精神科の既往もなく(認知症はあるかも)、30分で症状が良くなったり悪くなったりしているよね。せん妄のほうがlikleyだね。Psychosisとの鑑別やAIUEOTIPSは記載があったので、せん妄のtriggerを載せておくね。僕らが習った時代と変わらないけれど。。。覚え方は”I watch death” 嫌だね。。。でも死亡率が優位に高いことはすでに証明されているしね。
Infection | 敗血症、脳炎、髄膜炎、梅毒、中枢神経系の膿瘍 |
Withdrawal | アルコール、バルビツレート系、鎮静-眠剤 |
Acute metabolic | アシドーシス、電解質異常、肝不全、腎不全、高血糖、低血糖 |
Trauma | 頭部外傷、熱傷 |
CNS | 脳出血、けいれん、腫瘍、脳梗塞 |
Hypoxia | 低酸素、慢性肺疾患、低血圧 |
Deficiencies | ビタミン欠乏(VB12、ナイアシン、チアミン) |
Enviromental | 低体温、高体温、内分泌異常 |
Acute vascular | 高血圧緊急症、静脈洞血栓症 |
Toxins or drugs | 薬物中毒(CO、シアン、(有機)溶剤) |
Heavy metals | 鉛、水銀 |
鉛や水銀中毒を疑って採血したことないな。。。Visual diagnosisで皮膚所見や解毒薬を復習しておいてね(すぐ忘れる)。
110 B SAH CT(-):次どうする?
ずいぶんと使い古されたClinical questionだけれども、あまり有用な答えはないんだよね。こんな時はClinical policyが強い味方だ!2019年に急性の頭痛のものがupdateされたよ。
この症例だとOttawa SAH ruleだと除外できないよね(運動中に発症)。なのでCT撮影必要。発症から24時間たっており、6時間以内ではないので否定するには不十分。
LPの研究は症例数も少なく信頼区間も大きいのだけれど、今までの研究があるからまだ、LPが次の一手になってしまうんだと。CTAとの勝負になるのだけれど、CTAはER医の負担は少ないけれど、被曝の件があったり、未破裂かもしれない動脈瘤が見つかったときの戦略はまだ決まっていないんだ。
日本はMRIダメかな?でも動脈瘤見つかったらどうしよう。。。
https://www.acep.org/globalassets/sites/acep/media/clinical-policies/cp-headache.pdf
111 D 群発頭痛
頭痛の国際分類は知っているかな?分類だけで200ページ!辞書だよね。。。頭痛学会が翻訳してくれているからね。HPに公開されているよ。
一次性頭痛が第1部にまとめられていて、その第3章が緊張性頭痛をはじめとする三叉神経・自律神経性頭痛となっているよ。もっと数秒のギザギザ頭痛が頻回にあるSUNCTなんかは上手に問診しないとわからないよね。
ここでは治療が扱われているので治療ガイドラインを見てみよう。
ちょびっと古いけれど、2016年のアメリカ頭痛学会のガイドラインだね。酸素投与についてはSystematic reviewをすると、2本の質の高いRCTがあったようだね。6-12L/分で投与する方法でClassAの推奨度となっているよ。Hyperbaricの方法もあるようだけれど、ClassⅡのエビデンスレベルで推奨度はCとなっているね。総合診療の先生は予防(頻度を減らす)の項目も要チェック!
113 A 急性ジストニア
Dystonia:ジストニアはtone(筋緊張)が障害されている病態で、この症例のように斜頸で会うことが多いかな?今回は鎮静のために強力なドパミン拮抗薬(Haloperidol)が投与された後に起こっているよね。救急外来ではあとは制吐剤の時にワンショットで行くとジスキネジア(Kinesis:動き)、ジストニア、アカシジア(静座不能)が起こったりするから注意だね。
まさかのガイドラインもあるので覗いてみよう(無料だぜぃ)。
https://www.neurology-jp.org/guidelinem/dystonia/dystonia_2018.pdf
薬剤性のもので1章割かれているね。治療の選択肢であるBenztropinは日本での承認がされておらず、アキネトンの筋注が掲載されているね。こちらのERでは一度だけ使用したことがあるな。起こしやすい薬の一覧は今日の臨床サポートがよくまとまっていたよ(うちの研修医だったら無料で読めるんだよね)。
昔はMajor tranquilizerといってベゲタミンAとかBとかいう薬(しかも服薬をしてもらいたくて合剤)を内服している方がいて、遅発性のジスキネジアとか結構いたのだけれど、この頃はとんとお見掛けしないね。そんなときは抗コリン薬のアーテン®なんかが入っていたな~(遠い目)。。。
114 A Pericarditis
心電図のDiffuseのST上昇、心膜痛(横になると増悪、前傾姿勢で楽になる)で急性心外膜炎の診断はいいかな?
アメリカのレビュー(2019)
ヨーロッパのガイドライン(2015)
どちらも定義や治療はほぼ一緒だね。
急性心外膜炎 | 定義 (4週未満から6週間まで) |
主要 | 4つの項目の内、少なくとも2項目 1) 心外膜痛 2) 心膜摩擦音 3) 広範囲のST上昇 4) 心嚢液貯留 |
副次 | 1) 炎症反応上昇(CRP、ESR、WBC↑) 2) 心外膜炎症所見(CT、CMR) |
コルヒチンの有用性がここ10年くらいで固まりつつあるよね。詳しくはJACCのレビューを読んでくださいね。大抵の場合がBenignではありますが、うちのERでは循環器内科にコンサルトして原則入院になることが多いよ。タンポナーデへや心筋炎への進展を恐れているのがその理由だよん。
循環器の先生に教わったのが以下の心電図変化の時系列だよ。ここまで僕たちが見ることは少ないけれどね。ST上昇が落ち着いてからT波の反転が起こるんだ。心筋梗塞はST上昇が継続したままT波の反転が起こるよ。
われらが(!?)Amal Mattu先生も、Pericarditisの症例出していたよん。
実はこれを書いている前日に、mRNAワクチン後のPericarditisとMyocarditisが来院しているんだ。。。またECGとUCGを載せておくね。CDCの報告は以下にあるよん。
https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-06/02-COVID-Oster-508.pdf
115 C 乳頭浮腫
特発性頭蓋内圧亢進症(Ideopathic intracranial hypertension: IIH)、またの名をPseudotumor cerebriの症例です。眼底見れたら苦労しないよ!という突っ込みはさておき解説を見ていこうね。
ぽっちゃり女子でピルを飲んでいたりするとハイリスク。視野の障害を訴えたりするのね。診断基準は先ほども解説で出ていた頭痛国際分類(the International Classification of Headache Disorders: ICHD-3)からね。
https://www.jhsnet.net/kokusai_2019/2-3.pdf
A 新たな頭痛や以前からあった頭痛の優位な増悪で基準Cを満たす |
B 頭蓋内圧亢進が以下の両方で診断されている ① 脳脊髄圧が250mmH2O(小児肥満では280mmH2O) ② 正常な脳脊髄液組成 |
C 原因となる根拠として、以下の少なくとも2つ ① 頭痛は頭蓋内圧亢進の発現時期に一致して発現。 ② 頭痛は頭蓋内圧低下により軽減 ③ 乳頭浮腫 |
逆は低髄圧による頭痛もこの症で扱われているよ。腰椎穿刺が肝であるのは間違いなさそうだね(PEERⅨの解説はmmHgになっていますが、ご愛敬)。乳頭浮腫も見れなくちゃダメか。。。いい臨床医への道は楽ではないね。
頭蓋内圧が上がる他の病気、特にピル飲んでいるなんて聞くと静脈洞血栓症なんかは鑑別になるよね。二次性に上がっている場合の鑑別はリストとして挙がっているからちらっと目通ししておこう(Table. 4)!
治療はアセタゾラミドらしいのだけれど、シャント術なんかもRCTが企画されているらしいぞ。まだまだ知らないことばかりだね。。。
私は総合診療の先生に一度、診断してもらったことがありますが一例しか経験ありません。。。だれか追加で知っていたら教えてね。
116 D ネフローゼの浮腫
なんだか急に学生時代に戻らされるような問題だね。。。アルブミンをはじめとするタンパク質が失われて膠質浸透圧が低下し、血管内に引き寄せる力が減弱。そのため体液が血管外へ漏出するという話ね。
腎臓内科の先生たちは、Underfilling説とOverfilling説とがあり単純ではないらしい!?
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001217/4/nephrotic_syndrome.pdf
<Underfilling説>膠質浸透圧低下→血管外漏出→RAA系↑→さらに膠質薄まる→浮腫悪化
<Overfilling説>膠質浸透圧低下→血管外漏出→RAA系↑→体液量増加→浮腫悪化
アルブミンを足しても浮腫が良くならない例があったり、利尿薬が著効する例があったり、もう少し病態は複雑そうだね。どんなふうに腎臓内科の先生が理論を構築して治療しているのかちょっと聞きたいね。でも、ちょっとでいい。ちょっとで。。。
118 B iNPH
PEERⅨの正常圧水頭症推しはなんでなのかしら?これで3症例目だよね。。。
復習にはなるのだけれど、ガイドラインの概念の項目を載せておくね。
“特発性正常圧水頭症(iNPH)はくも膜下出血,髄膜炎などの先行疾患がなく,歩行障害を主体として認知障害,尿失禁をきたし,脳脊髄液吸収障害に起因した病態である。高齢者に多くみられ,緩徐に進行する。適切なシャント術によって症状の改善を得る可能性がある症候群である。”
ただし、病理の所見はないし、どうしてこの脳脊髄液の吸収障害が起こるかはまだ判明していないんだ。。。遺伝子多型も見つかってはいるけれども、詳しい病態生理の説明には時間がかかりそうだね。
119 A 内頚動脈・椎骨動脈解離
頸部のカイロプラクティスを受けてからの顔面のしびれや歩行困難が出現。椎骨動脈解離を疑いたくなるね。若年の脳梗塞症状を見たときには、こういった問診をしたいよね。
最初の報告は1947年?なんだけれど、
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/291970(大学では見れません)
解離の複数症例報告はドイツからあるよん。
https://link.springer.com/content/pdf/10.1007/s004150050432.pdf
でも因果関係についてはまだまだはっきりしないとお茶を濁しているね。もちろんカイロプラクティックの報告書も20000例に1人ととても少ないので因果関係はないのではと報告しているよ。動物実験とかで証明できるのだろうか?
もちろん血管病変を疑うときはCTAやMRAが推奨されているよ。
StatPearlsって知ってた?NIHの電子テキストで上記はそこから持ってきたよ。このテキストでは1stはCTAでとなっているね。僕らの感覚だと脳梗塞の合併となるとMRI/MRAと行きたくなっちゃうね。解剖の説明も書いてあるからね。Check it out !
120 C 男性の尿路感染症
私の経験不足か、こんなに症状のそろった男性の尿路感染症は少なくないかな?おしっこ近いとか背中がだるやみするとか言ってくれればね。。。
NEJMの2016年に高齢男性の尿路感染症のレビューがでていたよ。高齢男性のUTIは(中央値63歳)、90%が前立腺肥大やPSAの上昇を指摘された人がなるとの報告があるってよ。いわゆる複雑性ってことだね。
尿所見の取り方も慢性前立腺炎の時は煩雑で(4 glass test)、ちょっと泌尿器科にお願いしたいね。
一般尿検査も細菌尿だけで無症候性は治療の必要はない(妊婦や泌尿器科手術前は別よん)。膿尿がなければ95%の陰性的中率があるってよ。
画像の評価したあとは(造影剤有のCTが良いって)、泌尿器の先生に紹介をとあるけれど、うちは結構敷居が高いかな?
抗菌薬はE.coliをはじめとするグラム陰性桿菌を主体として前立腺に移行性のあるものをchoiceしたいね。
このリストの一覧の下には、投与期間も書いてあったよ。
・膀胱炎:7日間
・腎盂腎炎:7-14日間
・急性前立腺炎:最初は静脈注射でそのあとに経口で。30日コース。
この症例の解説は経口で30日間が正解になっているけれどね。日中だったら泌尿器科の先生と相談。Septicでなければ、一度静脈注射で治療後、外来でもよいかな?前立腺積極的に診察しなくちゃね!オーストラリアはしっかり入院が多いってね。
そうそう、残念ながらCiprofloxacinは院内採用はありませーん。LVFXで代用かしら!?
121 D 左上下肢、左顔面麻痺 責任血管は?
右MCAを選択するのは難しくないよね。顔面まで同側に出ているのであまり迷わないよね。感覚失語が出ているのは非典型的かな~。言語中枢は左にあることが多いから、右半身麻痺の時に出ることが多いよね。
一度だけ、左半身麻痺でAphasiaの患者がいて、「左利き」だったことはあるよ。優位半球(言語中枢)が右の可能性があるよね。
脳卒中のガイドラインはいまだにお金を取るらしく、無料では読めませんでした。一応パブコメを取る際の資料は落ちていたので、アクセスしてみてね。失語と言語障害の項目です。評価とリハビリメインで書いてあります。神経内科のレジデントの時にはここまでしてあげられなかったな~。転院先でしてくれているのだろうか?
https://kk-public-comments.jp/stroke2021/pdf/7/7-11.pdf
122 D 外傷性大動脈解離
Steering columnって何?と思って調べちゃった。。。機械弱いのよ。興味ある人はリンク読んでね。
男子がもてるには女性の苦手な、「ムシ」、「メカ」、「チズ」に強いとモテるって聞いたんだけど(Evidenceなし)、何を隠そう、私、全部だめなのよね(隠しとけよ)。。。
胸部X線では、異常を認めないものが7.3-44%にも上るそうだよ。昨今は、大動脈造影ではなく、造影CTで感度95%、陰性的中率はほぼ100%であるといわれているね。
診断戦略の変化は以下の通りだよ(AAST: American Association for the Surgery of Trauma AAST1(1994-1996)、AAST2(2005-2007))
AAST1 (n=253) | AAST2 (n=193) | p値 | |
大動脈造影 n(%) | 220(87.0%) | 16(8.3%) | <0.001 |
胸部造影CT n(%) | 88(34.8%) | 180(93.3%) | <0.001 |
経食道エコー n(%) | 30(11.9%) | 2(1.0%) | <0.001 |
治療法や治療の時期についても、即開胸!から適切な内科的治療(βブロッカーなど)後の待機的なステントでもよいのでは(もちろん病態によるが)という方向に動いているね。
AAST1 (n=207) | AAST2 (n=193) | p値 | |
外科的修復術 n(%) 単純遮断 n(%) バイパス併用 n(%) | 220(87.0%) 73/207(35.3%) 134/207(%) | 68/193(35.2%) 11/68(16.2%) 57/68(83.8%) | <0.001 0.003 0.003 |
血管内治療 n(%) | 0/207(0%) | 125/193(64.3%) | <0.001 |
ステントって急に使うって言ってあるのかな?緊急車両で持ってこないとダメかしら?
123 C
写真は自粛だぜぃ。選択問題としてみるとPhimosisとParaphimosisがあるからどっちかじゃないか?なんて高校生みたいなことはなしだぜ。AのBalanoposthitisは亀頭包皮炎(男児では鑑別にあげたいね。割礼している人は別ね)、BのFournierはいいとして、CのParaphimosisが嵌頓包茎で、DのPhimosisが包茎なのですね。英語って難しい!
私は初めに写真を見たときはHair touniquetだとおもいました。重大な合併症もあるようなので、とてもminorだけれどもUrologic emergencyだよね。
あとは異物とPriapism(持続勃起症)もUrologic emergencyだよね。。。女性看護師さんが相談の電話を受けると、必ず変わってくれと来ますww。本当に困っているんだけど、特に夜だと変態さんからの電話だと思うわね。
Hair touniquetの文献↓(Science directに飛びます。施設ログインすれば無料です)
124 C 痛みのない陰茎の皮疹
こちらも画像は自粛しよう。
梅毒によるchancre(ʃǽŋkər シャンカー):硬性下疳(げかん)だね。第一期で出現するよ。
第一期は見逃されやすい!だって痛くないしね。でも自分のにこれが出てきたら怖いなw
第二期は手掌や体幹部のrashや髄膜炎、眼内炎なんかがあるよ。無症候性も多いって。
第三期は感染性血管炎や神経梅毒(発症はいつでもいいらしい)だったね。はっきり言ってわすれたわ。
筋注のペニシリンGはおそらく大学では手に入らないと思うので、アモキシシリン+プロベネシド(尿酸の薬なのにね。ペニシリンの濃度をあげるらしい)で治療をするらしいよ(経験なくてすまん)。
125 B 失神 vs 痙攣
一過性の意識障害の戦いはいつまで続くのか。。。一応Scoringのようなものはあって以下がReviewには載っているよ。
舌を噛んだかどうかは、舌尖か脇かで違うようで舌尖だと失神、けいれんだと脇と解説されているよ。
時間がKeyになることは昔から言われているよね。
今回は若者だったけれど、高齢者をターゲットにまとめたいい本があるよね。
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