背景 HumorとProfessionalism

SRLの背景を書いてから、ずいぶん経ったな。。。峻輔先生と一緒に議論しながら今はProfessionalismにたどり着いている。。。

背景

プロフェッショナル・アイデンティティ形成は、医師として「考え、行動し、感じる」ことができるようになるために重要なプロセスであり、多くの研究がなされている。アイデンティティの理論に関しては、個人に焦点を当てた心理学的なアプローチ(厚い個人/薄い社会)と社会言語学的なアプローチ(薄い個人/厚い社会)があるが、アイデンティティが間主観的で外的な社会プロセスの産物であるという考え方が一般的である。

プロフェッショナル・アイデンティティの形成は二重らせんのように考えることができる。1本は個人のもの、もう一本は職業の鎖である。医療の実践共同体の中で、規範や期待、経験、文化を通じて個人のアイデンティティを職業アイデンティティにすり合わせていく。医学生が卒業時点ではKeganのStage 4(Imperial)であり、Stage 5(Interpersonal)や6(Institutuional)には及ばないことがわかっている。また、できる(Does)だけではなく、あるべき姿である(Is)という方が医師としての一貫した行動のよりよい根拠となることを主張し、MillerのピラミッドのDoesの上にIsを設ける提案がある。プロフェッショナリズムの最終的に目指すところはできるではなくIsであり、Stage 5や6に相当すると思われる。

もちろん、メンターやロールモデルの役割が大きいが、社会文化的側面からのアプローチは十分ではなく課題とされている。物質的な教育環境だけでなく、組織文化は個人のアイデンティティの社会化やプロフェッショナル・アイデンティティの形成に影響を与える。

ユーモアの教育効果については、初等教育のみならず、高等教育についても様々な知見が得られている2)。特に初学者が苦手とする科目(統計学)では、ユーモアを含む講義の受講者の方が、含まない講義の受講者よりも最終試験の点数が良かったという報告がある3)。また、同様に統計学の講義で、成績によって層別化された受講者のインタビューからもユーモアが学習動機につながったとの結果が得られた4)。いい先生と表彰された教師へのインタビューでは、いい教師はアドリブであれ、意図的であれ、生徒の学習促進や注意をひくためにユーモアを用いていた5)

医学教育現場でも、ユーモアの利用に対しては学生だけでなく、教師側も好意的にとらえていた6)。ただし皮肉や蔑みといったユーモアは他の学部の講義と同様、嫌厭する傾向にあった。ユーモアのある講義では出席率や講義後の試験の点数増加に寄与するとの報告もある7)。ユーモアの種類やその活用方法を学べる講義の選択者は、非選択者に比べて、模擬患者相手の診察において、コミュニケーションスキルが優位に上昇していた8)。病院の実習においても、教師と学生の間の親密性を高め、安全な学習環境を創造するのに役立っているのではと考えられている9)。様々な研究の限界点であげられているが、医学教育の効果を判定する上で、出席率、記憶力を中心とした試験の成績で測定することは限定的である。

医学界以外でも、数十年前は、ビジネスとユーモアは相いれないものであったが、ユーモアや笑いが歓迎される職場環境や文化は、ラポール、チームワーク、創造性の向上の効果が確認されている。組織文化は、基本的に一緒に働く人々の相互作用から生まれ、ユーモアは職場の相互作用に広く浸透し、ほとんどの組織で必然的にユーモアとの出会いがあり、ある程度の頻度で遭遇する。そのため組織の「ユーモア風土」は、組織文化の形成に重要かつ基本的な役割を果たす。「ユーモア風土」は、職場グループの従業員がどのようにユーモアを使い、表現しているかについての共通認識と定義している。ポジティブなユーモアの効果は、ストレス軽減や燃え尽き症候群の予防といった職場ストレスの防御だけでなく、仕事の達成度や満足度、心理的ウェルビーイング、対処能力、チーム結束力を高める。ユーモアを尊重する部署の文化がプロフェッショナル・アイデンティティの形成にどのような影響を与えているのか調査する。

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