今年度もお世話になりました。一人当たり約40-50問くらいを解いてもらった計算になるのでしょうか。お付き合いいただきましてありがとうございます。私もこの年になっても知らないことばかりで、若い皆さんに教えてもらっています。ここでの学びが、少しでも、実臨床で、初期研修医、学生さんへのネタになってくれれば幸いです。
このメンツで診療したり、勉強できたりするのも今年度だけ!最後までEnjoyしてください。あとアンケートありがとうございます~(武勇伝人気だったのよん。来年度もしよっと)。今後の参考にしますね!
I先生担当分
224 A 発熱のDM患者、Peripheral sign(+)→血液培養
UFOではなく、FUOの最右翼のIE。最初っから疑って、血液培養を3セット取ってという風にはなりにくいよね。FUOはボスの勉強会でReviewが宿題になっていたはずなので読んでみてね(読んで手短に私に教えてね)。
日本語のガイドラインは2017年に出ているんだね。2015年のESCを参照にupdateしている印象です。身体診察を大事にしたいのはやまやまなのだけれど、IEのPrevalenceが低く、その中でもPeripheral signが出るのが、みな<10%なので、必ずカルテに書いてねとも言えません。。。
僕らはエコーの使用頻度は高く、画像も診断基準に組み入れる旨がガイドラインに収載されていたので一応感度や特異度を載せておくね。
みんながガイドラインは上手に紹介してくれるので、ちょっとガイドラインに載っていなかったTAVRのことを最後に書きますね(高齢者のAS多いから、今後増えそうだしね)。
TAVRの合併症としてのIEは0.1%-3.0%の発症率だそう。手術に比べて大動脈弁閉鎖不全が起こりやすくIEのなりやすさに関わっているんだって。起炎菌はS.aureus(6.2%)よりもEnterococcus(34.4%)が多いってよ。もともと心臓の手術ができないようなMobidityを持っているので(心不全、COPD、高齢など)IEになっても手術は14.8%しか行われず、院内死亡率は36%に上るってよ。。。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2686799 (JAMAのReview 2018)
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2017_nakatani_h.pdf (日本循環器学会ガイドライン2017)
225 A 失神32歳男性、ECGで特徴的なST上昇→Brugada syndrome
診断は見たことがあればたやすいよね。I先生もスライドに入れてくれていたけれど、3種類を復習しておこう。
ちなみに、私は前任地の健康診断を夜勤明けの朝食なしでECGを取ったらSaddle back型でした。失神の既往はないのであしからず。
私もプラクティスの一部になっていなくて申し訳ないのですが、原因不明の心停止からの蘇生症例に対して高位肋間のECGが推奨されています(エビデンスレベルは低いけど)。看護師さんに「一肋間あげて取って」って言ってもいいかも(年齢は考慮すると思う)!?
患者さんの今後のフローチャートを見ておこうね。
私も喜んでECGを循環器内科医に見せたんだけど、「ふーん」で終わったのは上記のフローだからなのね。心電図診断は「異常なし」で帰ってきたんだけど。。。異常はあるよね(精査は不要)!?
227 C クループはボスミンネブライザーで軽快→3時間経過観察
私も時折使うMDCalcにも掲載されている重症度分類を紹介してくれていたね(Westly先生の文献は1978年!)。クループの重症度は「臨床診断」だからね!
軽症 | 中等症 | 重症 | 最重症 | |
Barking cough | ときどき | しばしば | しばしば | いつも(目立たないことも) |
Stridor | せき込み時のみ | 安静時にも | 吸気も呼気にも | |
Retraction | なし-軽度 | 胸骨切痕上 | あり | あり(目立たないことも) |
Skin color | (チアノーゼ) | くすんだ色 | ||
Level of consciousness | 清明 | 軽度Distress | 不穏 | 傾眠傾向 |
ステロイドは中等症以上ならば適応はあると思うんだけれど(CochraneでSystematic reviewがされていて重症度も下げられるし、再受診を抑制、滞在時間も短縮)、量がまだControversyのようです。0.6mg/kgが標準で、0.15mg/kgでもと研究されていますが、Nが小さく、Validationもまだです。。。素直に容量用法については小児科の先生と相談しながらでもいいよね。
10kgの子供が0.6mg/kgとすると6mgだよね。デカドロンエリキシル(リンデロンシロップも同じ)は0.1mg/mlだから、60mlなんだ。。。甘いもの好きでも1歳くらいの子供が60mlのめるかな?
小児科専門医問題集第2版よりクループの問題です。
急性喉頭蓋炎よりもウイルス性クループの特徴に近いのはどれか。
- 嚥下痛
- 突然の高熱
- 高い炎症反応
- 高調性の吸気性喘鳴
- 1-2歳より3-4歳で好発
答え 4(これは解けるわな!PEERⅨの方がクループに関してはレベル高い)
ACEPとAAPの共同で書かれたテキスト(今は5版、私は4版、章ごとに問題つき)
デカドロンエリキシル(添付文書)
H先生担当分
229 D HCVでLC患者のUGIBでショック→PPIと抗菌薬
この間ボスがメーリングリストで、肝性脳症に対するナンバーコネクションテストを周知していたけれど、あまり救急外来ではやらないかな?診断そのものというより、経過を追うときに使っていた印象です。
肝硬変(Liver cirrhosis:LC)の上部消化管出血に対して、緊急内視鏡を計画している。そんな時にはProton pomp inhibitor:PPIと予防的抗菌薬を投与しよう!
今回は、静脈瘤ではなく、消化性潰瘍(Peptic ulcer)がある症例のようだね。PPIの容量や用法については、80mgボーラス投与しその後、8mg/hを72時間連続投与と解説にあるんだったね。消化性潰瘍のガイドライン2020では、同様の記載はあるんだけど、高容量でなければいけないエビデンスはなく、保険も通っていない(!?)ようなので20mgでいいかな?消化器の先生も高容量で使っていないよね?
https://www.jsge.or.jp/guideline/guideline/pdf/kankouhen2020.pdf (2020年消化器学会のLCガイドライン)
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD002907.pub2/epdf/abstract(コクランのLC患者の消化管出血に対する予防的抗菌薬に関するSR)
トラネキサム酸は今回は出てこなかったけれど、消化管出血に対しては、HALT-IT研究が有名だね。他の外傷や産後出血についても慈恵大学ICUの先生たちがまとめてくれているよ。これには載っていないけれど鼻血は成績良かったんだよね?
https://www.jikeimasuika.jp/icu_st/200721.pdf (慈恵医科大学のICUの資料、さすが秀逸!)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0735675721008779 (鼻血とTXA、SRとMA)
230 C QT延長からのTdPで脈あり→同期下カルディオバージョン
この波形で意識飛んでいて、脈が触れないだろうから同期下は???です。
アルコール性肝硬変の患者さん、低K、低Mgがあってフォローしていたのだけれど、PVCが何度かNon sustain VT(NSVT)を来したのでECGを取るように指示したら、「忙しいから先生取って」と言われて取ったら。。。
目の前で白目向いて、あの世に行きかけたぜぃ(僕もね)。胸骨圧迫しながら除細動をかけてICUに行ったよ。。。CV入れて濃ゆーいカリウム製剤で補正してたよ。それでも3回くらいTdPが起こってそのたびに除細動したよん。ちっとは怖さが伝わったかな?
231 D 悪い歯があるって言われてほっぺ腫脹→経口抗生剤
PEERⅨの写真は独特なんだよね。。。どこが悪いか一目ではわからないんだよね。。。歯周炎がひどくなって腫れてしまったというストーリーみたいだけれど、口腔内も所見ほしいな。
H先生が紹介してくれたガイドラインをレビューしてみよう。ガイドラインの孫引きみたいだけどね。
私は第2群になりたくなくて去年抜歯しました!第3群はもう骨髄炎みたいな感じだね。第4群もドレナージが必要ってあるけれどもどうやってアプローチしたらよいか。。。炎症の波及するところをバイブルRosenがまとめてくれているんだ(これを見てもよくわからん。CT撮ってもわかるか自信ない)。
歯牙の診察は、舌圧子を用いた軸方向への打診の有無が紹介されていたね。もし熱いや冷たいに対して鈍くて、強い痛みを訴えるようだと歯尖部膿瘍を疑うんだって。
この患者さんがどうかはわからないけれども、歯周膿瘍で排膿が十分でない場合は弱い推奨をしているよ。アモキシシリン(250mg×3-4回/day)やアレルギーがある場合はクリンダマイシン(150mg×q6h)などを投与って。どこから採血したり画像検査したりするか悩ましいな。。。
A先生の言っていた歯尖部膿瘍や裂隙への感染波及からの気道閉塞には十分気をつけたいね(とてもいい視点だね~)。
この子は知的障害があって、歯磨きは嫌いで、なおかつ自分の口の中を掻いたりしちゃう子だったね。舌下が腫脹しているのはわかるかな?気道が危なくて経鼻で挿管したよ。。。その後耳鼻科にドレナージしてもらったね。
https://www.perio.jp/publication/upload_file/guideline_perio_antibiotic_2020.pdf (歯周病ガイドライン)
232 B 胸鎖乳突筋前にシスト、痛み発赤なし→Bracheal cleft cyst
面喰った問題だったね。。。ちゃんと発生学の資料までつけてくれてありがとう!先天性疾患には発生学は欠かせないもんね。
小児科専門医試験のための問題集にもいい問題はなかったよ。少し古かったけれど、America Family physicianのレビューがあったよ(同じ年代でPediatric in Reviewもあったんだけどアクセスできず)。
先天的(ここではDevelopmentalと書いてあるね)、感染症、腫瘍と3つに大別するといいらしい。VINDICATE-PもV(Vascular)とI(Infection)とP(Psychiatory)しかなかったER医としてはCongenitalやNeoplasmをあげるとなるとつらいな。。。
場所と組み合わせると鑑別診断はこんな感じだ!
https://www.aafp.org/afp/2014/0301/p353.html (AFPのレビュー)
USはエキスパートオピニオンだけれど最初の画像のModalityとして推薦はされていたよ。ちびっこにいきなりCTをオーダーできないもんね。
A先生担当分
233 C 1歳半男児上気道炎4日後発疹、粘膜intact→突発性発疹
小児のウイルス感染症をここ2年くらいまともに見てないな。。。突発性発疹、伝染性紅斑、水痘、プール熱、手足口病、インフルエンザ。。。ここ最近はコロナの一人勝ちだもんね。
まずは英語の勉強。突発性発疹 Roseola(infantum)=Exanthem subitum=sixth diseaseと統一してくれよという感じです。sixthはHHV6(subtype Bらしい)だから覚えやすい!?
実は麻疹が第一、風疹が第三、伝染性紅斑が第五らしい。二と四はどこ行った?そしてなぜ第六???
I先生おすすめのFlash cardにも突発性発疹の子供の写真があるのだけれど、さすがに発疹だけ見てもわからん。。。臨床経過が特徴的だもんね。
6か月から1歳の子供に、上気道症状や下痢といった症状を伴う3-5日の急な高熱(時に40度を超す)をきたす。この時に永山斑が口蓋垂の脇に見られることがあるよ(2/3程度)。解熱(defervescence←難しいねw)した後に、体幹部より始まるかゆみを伴わない2-5mmの発疹(丘疹)が出るんだね。この時に熱性けいれんを起こすこともあるんだったね(15%程度)。
麻疹や川崎といったところが鑑別になるんだね(麻疹は診断したことないのだよ。すまんね)。
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kenko-iryo/eiken/kansen-center/shikkan/ta/roseola1.html (横浜市衛生研)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK448190/#!po=65.0000 (Pubmed StatPearlsより)
小児定点に指定されているので、指定された医療機関は届け出が必要だ(5類感染症)。
麻疹=Measles=Rubeola=はしか、風疹=Rubella=German measles=Epidemic roseola=三日はしか
USMLEを解いていた時代に、なんじゃこりゃ!と思ったのは私だけではないはず!?覚えなくてよいよ!楽しめぃ!
235 C 20歳女性STI疑い(症状所見なし)→CTRX+AZM
A先生のJCでもあったとおり、最近のCDCではDOXYが推奨されているよ。JCもあったし一度、勉強会でも扱っているよ。ということで省略~!
個人的には大きい人には1g筋注っていうのが好き。
237 D ERで墜落産→3.0のカフ無チューブで挿管
墜落産は経験ないんだよね。。。新生児もこの頃見ないもんね。。。神様仏様、Rosen様に聞いてみよう。
みんなカフ無しだよね。今回はほぼ3kgのMature babyなので3mmカフ無しを選択してね(Rosenの本だと3.5mmのカフ無しとなるけれど、選択肢にないもんね)。
おそらく混乱を極めるだろうから、病歴で聞いておきたいことは以下の通りだよ。
あとは、児のWell beingを確認するのがApgarスコアだったね。1分値と5分値をつけられるかな?APGARと頭文字で覚えるのだったけど、うーん、記憶ない。。。
私たちにできるのはAPGARスコアを取りながら、良くなるように、祈るではなくて。。。あっためて乾燥させる(あったかいバスタオルでふいてあげて、こまめに変えよう!)、気道が開通するpositionをキープ(肩の下にタオル入れるといいよね)、羊水をサクション、背中をすりすりして自発呼吸を促す!おー。君も私もできそうだ!?
238 B 腰痛・右足放散、右ATR減弱→L5/S1のDisc herniation
腰痛に神経の症状が出ていて、右足全体に放散しているんだね。椎間板ヘルニアを疑いたくなるね。ガイドラインの第3版が打っているのだけれど、いつもの通りMinds 疾患名 pdfと検索すると以下が拾えます。きちんとしたものが良ければ電子書籍でも販売しているので手にしてみてね。
腰痛の診察は痛いところを診察することはもちろん(CVA叩打痛や腹部の診察もね)、下肢の神経診察も大切だよね。Pulse/Motor/Sensoryに加えて、疼痛誘発試験(SLRTやLasegue)や深部腱反射なんかも記載するといいよね。
下記のガイドラインの診察の項目にもあるけれど、膝蓋骨腱反射減弱はL4で、アキレス腱反射減弱はS1で説明がつくんだね。
https://ssl.jssr.gr.jp/assets/file/member/topics/cervical_spine_200915.pdf (第3版が最新)
https://straightbigtree.com/peer%e2%85%b8%e3%80%808-30%e5%8f%b7/178/
#98で急性腰痛症は扱っているよ。
ちーれじ担当分
239 C CFの急変→Needle decompressionを考える
ときどき、アメリカではCommonだけれど、日本ではほとんど見たことない病気が挙げられるよね。Cystic fibrosisはそのうちのひとつだね。
もちろん、こういったSecondary spontaneous pneumothoraxで一番多い背景疾患は、COPDだからね!
https://www.thelancet.com/pdfs/journals/lancet/PIIS0140-6736(20)32542-3.pdf (Lancetの2021年の記事、チャネルの話も書いてあるけど、余裕のスルー!?)
240 C 不安神経症で胸部の違和感、動悸、呼吸苦→CO2↓、脳血管収縮
過換気症候群で失神しちゃう機序が説明されていたね。若い人はともかく、中年以上では神経症圏と決め打ちすると危ないからね。
Nijmegen質問紙って知ってた?過換気症候群らしさを評価するもので1985年に開発されているってよ。下記のリンクに載せたよ。16項目が0-4の5段階(頻度だから曖昧?)で64点満点中23点以上だと過換気っぽいよって。使ったことなかったな。。。
https://hgs.uhb.nhs.uk/wp-content/uploads/Nijmegen_Questionnaire.pdf
開発した著者らが2015年になって記事を書いていたよ。一応、Validationにも耐えられたって。過換気症候群の人に16項目つけるほうが面倒って思っちゃうのは私だけ?
https://hgs.uhb.nhs.uk/wp-content/uploads/Nijmegen_Questionnaire.pdf (開発者の2015年の記事)
243 A 神経性食思不振→電解質チェック
食べなきゃいけない人が食べなくて、食べなくてもいい人が過剰に食べちゃう。。。太らなきゃいけない人が太れなくて、痩せなきゃいけない人が痩せられない。。。
認知のゆがみ(だから精神科の先生が扱っているんだろうけど)ってどうやって起こってどうやって直すんだろうね。。。認知行動療法とかって簡単に言うけれど、全く自信ないや。
なので身体的な影響が出てしまっているところをERでは直すことに注力しよう!ここであげられた電解質異常や徐脈、脱水、低体温、低血糖はなおし甲斐があるよね。
Refeeding syndromeには気をつけろってあるからね(栄養療法をはじめて3-7日って結構空くのね)。電解質異常はK、MgだけでなくてPや微量元素、ビタミンも注意って!精神科の先生も大変だなこれは。
50代の神経性食思不振症の女性が、昏睡で自宅で見つかって低血糖だったな。。。でも低血糖昏睡が持続していたよ(私ではないけれどドクヘリ事案でした)。。。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK459148/ (もう定番化したかな!?StatPearlね)
https://www.edportal.jp/pro/pdf/medical_cooperation_03.pdf (ちーれじが紹介してくれた手引き、AMEDというところから資金援助を受けて作成されたんだね。みんなの役に立つ研究はいいよね!)
これにて今年度は終了~。皆さんの新天地での活躍を祈ってるぜぃ!最後くらい一緒に乾杯したかったのにな。。。
いろいろ調整してくれたちーれじ、どうもありがとうございます。撮影はなくなっちゃって残念だったけどね。来年のちーれじに引継ぎをお願いいたします!
来年度は私も、新しいことにチャレンジします。アラフィフの手習いです。。。人生100年時代、こんなおじさんがいたっていいじゃないか!と自分を鼓舞しています。でも頑張っている風でもなくさらっといい仕事したいなぁ。
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