友利幸之介ら スコーピングレビューのための報告ガイドライン 日本語版:PRISMA-ScR 日本臨床作業療法研究 No.7:70−76,2020
Humorや笑いといった項目は医学教育研究の中であまり研究が少ない印象。そこでScoping reviewをしてみては?とのアドバイスを受ける(ありがたい~)。Scoping reviewは聞きなれなかったが、既知の知見をもとに「地図」を作成し、研究されていない範囲を特定することを目的としている。PRISMA-ScRの報告ガイドラインを概説してくれたこの文献を読んでみた。
文献レビューの相違点
レビューといった時には、3つに大別され、特徴は以下の通り。ナラティブは文献集めや統合は著者任せ。システマティックレビューはPROSPEROの登録し、再現可能な形で文献の検索や選択を行う。システマティックレビューは質的統合、メタアナリシスは量的統合である。
スコーピングレビューはこのちょうど中間にあたる!プロトコルはおおむね作成も変更可能で登録は自由。データ抽出は明確だが、バイアスリスク評価は任意。統合するというより概観する(広がっているイメージかな?)。
スコーピングレビューとは
「その研究領域の基盤となる主要な概念、主な情報源、利用可能な文献や情報の種類を素早くまとめること」(ArkseyとO’Malley)
1)研究活動の幅広さ、範囲、性質を調べる。2)SRを実施する価値があるか決定する。3)研究結果の要約と普及、4)既知の知見から研究ギャップを特定する(ギャップ:研究する価値のある未解決部分)。
スコーピングレビューの方法
2018年にPRISMAの拡張版として、PRSIMA-ScRの報告ガイドラインを発表している(Triccoら)。
上記に沿って、各項目、どんなことをやればよいかを解説!
1) 研究疑問を特定する
研究の疑問がなぜ?どの程度?といったタイプになる。PICOよりもPCC(Patient, Concept, Context)が該当する。可能な限り明確にしておく!プロトコル、タイトル、研究背景、目的、選択/除外基準などで統一されているかを常に注意する。スコーピングレビューの97%が研究疑問が明確!
2) 重要な研究を特定する
事前のプロトコルで検索式を作成する。原則PCCや研究疑問に従う。具体例は表4へ。概念はANDで検索ワードはORで結ぶ。様々な研究デザインやGray literature(研究論文以外の刊行物)が包含される(52%)。
3) 研究を選ぶ
[選抜]はタイトルとアブストラクトからスクリーニングし、文献を入手する。[適格性]が認められると[採用]となる。このプロセスは2名以上が別々に並行して行う。意見が割れたときは第三者も含めて議論し決定する。除外した文献の理由も記録しておく。
4) データを抽出する(Charting)
文献から、データを抽出することをChartingという(初耳!)。どんな項目を抽出するかはスコーピングレビューの核ともいえるため吟味しておくこと!
5) 結果の収集、要約、報告
内容の要約は表で示されることが多い(82%)。図が用いられることも(17%)。論文の質のチェックは14%で任意のチェック項目。
6) 結論
結果の要約、研究疑問や目的にこたえているか、結果を使用する関係者(医療者、患者、消費者、政策立案者など)のニーズに合っているかを確認。結論で触れられるのは、既存の研究のギャップ(85%)、今後の研究への示唆(84%)、システマティックレビュー実施の示唆が12%。
スコーピングレビューは、何らかの研究を始める前に、その領域の既存の知見をまとめるために行われていることがわかる。
スコーピングレビューの報告ガイドライン
24名の専門家と2名の研究者がEQUATOR Networkガイダンスに基づいてデルファイ法を用いて作成。PRISMA-ScRはPRISMA声明から5項目が除外、2項目が任意とされた。
おわりに
日本語版を作ってくれた(Triccoらより許可あり)。
私見
自分でScoping reviewができるようになって、作品にしたい。Intraprofessional learningのスコーピングレビューをメソッドを中心に読んでみるか!→BEMEにCOVID-19期間の教育の進展についてのScoping reviewあり。
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