JOHN SANDARS & TIMOTHY J. CLEARY Self-regulation theory: Applications to medical education: Medical teacher. 2011; 33: 875–886. AMEE Guide No. 58
Self-regulation theory自己調整型学習の総説を読んでみた(松山先生の孫引きです)。AMEEだぜぃ。
Introduction
What is self-regulated learning?
The application of self-regulation theory to medical education
Improving academic achievement
試験の成績が優秀な生徒は、プロセスのゴールを設定することに長けており、自己をモニターし、評価していた。特に初学者は、アウトカム重視ではなくプロセス重視で目標を設定するとその目標に到達したかを自己評価しやすく、自己調整もしやすい。一つのアプローチは、予測、質問、説明、まとめという方法である(Peter君の逸話はわかりやすい。学生さんに話してあげたい)。
Improving clincal performance
フリースローやダーツの向上過程で、このSelf-regulated learningの効果を確かめた。ここでは2年目の家庭医学のレジデントの紹介。臨床推論や診察がよく外れて自信を失っているPaul君。SRLのアプローチとは?OSCEをするとして、
- 自己調整のカギとなる過程で問題を同定する。
- OSCE前の質問:
- 患者さんの心臓の診察は自信ある?
- 診察する前に、自分の中での目標は?
- 心臓の診察がうまくいくにはどんなことが必要?
- OSCE中の質問:
- ここまで完璧にできたと思う?それとも何か間違えた?(実践中の自己モニター)
- OSCE後の質問
- 心音の解釈が間違えていた場合
- どうしてできなかったかな?(できなかった要因の同定)
- 正しく解釈するにはどうしたらよいか?(成功するためにの自己調整を評価)
- 正しく解釈できた場合
- どうして成功できたか?(成功の要因も評価)
- 心音の解釈が間違えていた場合
- OSCE前の質問:
- 臨床能力を向上するためのカギとなる自己調整過程についての問題を修正する。
General instructional approaches
The role of tutors
- 学習者がスキルを持った人(tutor)を観察できる機会を与える。
- 学習者が自己調整過程が必要な状況に従事させる(難しい教科書・記事、診断のため決断、自己調整型学習へのコーチング)。
- 学習者が自己調整型プロセスの利用により気づけるよう促す。
Learning to learn courses
医学部1年生にMSLQ(Motivated strategies for learning Questionnaire)にこたえてもらい、チュートリアル教育の教材とする。教材の中には自己調整学習を改善するためのヒントが書かれており、すべての学生に配られる。最後に自己省察の練習や自己調整型学習を発展させるためのアクションプランを完成させてもらう。
Feedback focused on self-regulation processes
自己評価とパフォーマンスとのギャップがある場合、パフォーマンスが低かった場合にも自己で修正することが困難。自分に正しいフィードバックをかけたり(内的)、先生やTutorからフィードバックをもらったり(外的)することが必要。自己フィードバックのためには、ワークブックがあり、自己のパフォーマンスを記録したり、学習戦略や技術の変化を記録できる。他者からのフィードバックはより重要で、必要不可欠である。
Future developments and applications
Integration into existing curricula
Problem based learningとSRLについてはOverlapするところもあり、統合しやすい。しかし、自己調整型学習の発達に寄与しないという研究もある。
Development of e-learning
オンラインコースでの生徒の理解を成功させるのに自己調整型学習を利用することに、興味関心が出てきている。オンライン学習に先立って、自己調整型学習の短いトレーニングコースを用意したり、訓練されたファシリテータが自己調整型学習技術を利用する方法を授けるために参加したりという研究がなされている。
Identification and remediation of underachievement
臨床の不出来は患者の安全にとてもインパクトがあるので、教育者にとっても臨床家にとっても心配事である。SRL-MAT(Self-Regulated Learning microanalytic assessment and training)の利用は興味深い。
アンプロへのSRLアプローチを紹介する。サムは医学部最終学年で、急に患者の話を遮ったりして看護師や患者は困っている。また本人には自覚はなく問題ないと思っている。
まずはSPを用意して、コンサルテーション技術を客観評価することから始める。いいコンサルテーションをできる自信は?と問うと100%との答えだった。コンサルテーション後に患者とSamにインタビューすると、患者は共感の態度もなければ、患者の心配に気づいておらず、不満だった。Samはこのことに全く気付いていなかった。自信はあり、今度どのように改善するべきかや自分の評価基準もはっきりしなかった。
tutorの出番だ。Samは、何度も患者の非言語の行動を観察したり、記録したりした。そして一緒にtutorと振り返った。するとSamのコンサルテーションにおける自己評価は下がり、患者の感情的な不満の理解が必要ということが分かった。
今後は、自己調整、感情にたいするアプローチも期待され、西欧諸国だけでなく異なった文化圏でも同様のアプローチが有効かといった研究が期待される。
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